インライン検査における搬送ノイズを大幅に低減出来る「二重誘導法」(特許出願済)の理論的根拠および最適設計法をIEEE国際会議にて発表しました。
製造工程中のインライン検査において、搬送ノイズを低減し検査工程のSN比(信号雑音比)を向上し、傷の検出精度を高めることが製造現場で求められています。金属製のワイヤ・ロッド・パイプ等基礎部品の良否が最終製品の歩留まり・健全性を左右します。
これら基礎部品の製造工程では、テックス理研が得意とする渦電流探傷試験(以下本試験)が主に使用されています。本試験は部品の僅かな振動でもノイズが発生し、検出したい傷信号と同等以上の信号となり、見分けが困難となります。この問題克服には従来方法として「多重周波数法」1がありました。
テックス理研は、絶えざる緻密な実験に基づき、渦電流試験の検出信号から搬送ノイズを抑制する新励磁方法により搬送ノイズをキャンセル(除去)する独自技術「二重誘導法(以下新手法)」2(画像1)を発明しました。基本特許は既に国際出願を完了し、一部のお客様には既にこの新手法を組み込んだ実機(画像2)を製造工程にて実際に導入頂き好評を得ていました。
本技術について技術的・理論的な裏付けと最適仕様の設計方法を確立するために、神戸大学・小島史男名誉教授、厚労省所管職業能力開発総合大学校・小坂大吾准教授とテックス理研技術陣との共同研究プロジェクトを立ち上げ、テックス理研の実験結果を説明出来る3次元シミュレーションモデルを開発し、この度、理論的根拠を得ることに成功し、最適設計法を確立しました。その結果、搬送ノイズを従来装置比較6%以下(94%減衰)にすることが確認出来ました。
この一連の研究結果を小坂先生に、厳しい査読プロセスを経てIEEEの磁気部門が主催する国際磁気会議(Intermag)3にて4月26日発表頂き、日刊工業新聞にても5月25日掲載頂きました。
5月25日掲載 日刊工業新聞
1.複数の周波数の信号を混合することで搬送ノイズ等の不要な信号を抑制することが出来る。
2.単一周波数で用いることが出来ること、傷信号への影響が少ないことが多重周波数法よりも優れている。新手法は新型プローブを採用し、自己誘導と相互誘導を同時に利用している。ノイズキャンセルヘッドホンは周囲の環境音の逆位相の音を再生することで、雑音を軽減しノイズの少ない音楽を出力する。このように開発した新型プローブは、搬送ノイズの逆位相の磁束を相互誘導用の励磁コイルで発生させ検出信号に含まれる振動成分のみを減衰する。その際、傷は従来手法と同等の検出信号として得ることが出来る。
3.Intermag(インターマグ)とは電気電子分野で世界最大の学会である米国電気電子学会(IEEE)の傘下で磁気関係を担当しているMagnetics Societyが主催する国際会議で、正式にはIEEE International Magnetics Conferenceと称す。Intermagは1964年に米国ワシントンDCで開催されたことに端を発し、毎年、世界50~80の国と地域から、1,000~1,800人の参加者がある。Intermagの対象分野は磁気や磁性材料であり、私達の生活や社会を支える基盤技術として学術的にも産業的にも日々発展している。
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